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五月も始まったばかりのある日。
五月晴れどころかどんよりとした雲が空一面を覆っているなか、僕こと天音優樹【アマネ ユウキ】は、粗大ゴミ置き場を訪れていた。
何故そんな場所に居るのか。そう理由を問われれば簡単だ。
僕がゴミを売って生活しているから。
……事実を書いているだけなのに、まるでホームをレスされた方々みたいになるのはなぜだろう。
きちんと説明させてもらうと、僕は世間一般で言う『貧乏学生』の一人だ。もちろんアルバイトはしているけど、圧倒的にお金が足りない。仕送りをしてもらえばいいのだろうけども、複雑な家庭環境があるのでそこは甘えるわけにはいかない。
それとあれだ。一人暮らしだし、健康的な男子なので、ね? そういうのやあぁいうのが必要不可欠、ってわけでもないけどさ? あっれば心が潤うでしょ? けど、そのためにお金をくださいって言うのは、恥ずかしいとか良心が痛むって言うより……情けないじゃない?
うん、何書いてるんだろうね。
話を戻すと、お金のない僕は現状を打開すべく、ここに廃棄されている家電製品や電子機器を修理して格安で売ることを思いついたのだった。たまに修理を請け負ったりもするけど。
もちろん、ただの大学生があらゆる最先端科学の結晶を新品同様に修理出来るわけがない。じゃあ、なぜそんなことが出来るのか?といった疑問は後々分かるので置いといて。
つまるところ、ここは僕にとっては宝の山みたいなものなわけです。捨てる神あれば拾う神ありだね。
「それにしても、今日はいつにもまして大量に捨……豊作だなぁ」
大きなフェンスで囲まれた中にある大小様々な宝物──家電製品が、辺り一面に無造作に転がっているのを眺めて呟く。学校や会社が密集しているからか、ここはまるで外国のスクラップ置き場のように巨大で、様々な機械群が自己主張するかのように鈍い輝きを放っている。
小さい山が新しく建造されているのは人として悲しむべきなんだろうけど、僕からすれば喜ばしいことこの上ない。こういうの何て言うんだっけ……二律背反?
考え事はここまでにしてさっさと使えそうな物を探すとしよう。軍手を身に付けて空を見上げれば、いつの間にか大多数の雲が灰色から黒色へと変化していた。
「あー……今夜は荒れる、よね?」
その呟きに応えるかのように、どこかで雷が鳴り響いた。
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