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「使えない、使えるけどいらない、使える、使えない……」
今まで培ってきた勘と、大学で得た知識を総動員して取捨選択を続ける。
ちなみに大学は総合工学部という、日本で唯一の学部。自分の好きな工学系の授業に出れて、一定の単位を取れば卒業出来る。のだけど、そこから知識を活かせるかどうかは別だからね。結構シビアな学校なんですよ?
「って、うわー……没頭しすぎたなぁ」
作業を終えて顔を上げると、見える空全てが真っ黒だった。
急いで軍手やヘルメットといった探索セットを手早くリュックサックに詰め、忘れ物がないかどうか最終確認。
ちなみに今回の収穫はコンバーター数十個、トランジスタ八個、パソコンの基盤が数枚だった。
新しい山は残念ながら、ほとんどが壊れ尽くした物ばかりだった。いや、社会的に見れば残念どころか万々歳なのだけどね。
それらを背負うと、帰り道へと──
「んっ?」
──動かした足をすぐに止めた。
別に忘れ物をしたとか、警察の人が僕に向かって走って来たわけではない。何度か不審者と思われて職質を受けた事はあるけど。……いや、十分不審者か。
もちろん僕が足を止めたのはそんな理由ではなく、青い冷蔵庫が行く手に置かれていたのが目に入ったからだ。
『棄てられていた』じゃなくて『置かれていた』と表現したのは、この冷蔵庫があまりにも堂々と道の真ん中に鎮座しているのを見たから。色も相まって、それはまるで、晴れた青空が長方形に切り取られて落ちてきたようにも見える。
近づいて観察すると、鉄独特の光沢を放つ表面には傷一つ無い。塗料が剥がれた形跡もない。新品同様、と言うよりも、新品そのものだ。
すかさずドライバーを取り出し、裏蓋を開けて中身をチェックする。ちらほらと見かけたことのない部品があるのがひと目で分かった。んー、圧縮式ってのはわかるんだけどなぁ。もしかして外国産とか? そうだとすれば、今まで見たことないのも納得がいくし。きっとそうだね。
そのまま調べていると、棄てられた原因が分かった。どうやら冷却機がイカれてるみたいだった。冷気を庫内に流すファンと冷却器を繋ぐ線が途中で切れてるんだけど、どうやら熱で焼き切れたらしく、銅線が液体状になって固まっている。って、銅線の融点って八百度なんだけど。家庭の電気出力じゃそんなのできっこないしなぁ……。
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