0kw/話 10億Vの発端

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「作業台貸してくれてありがとね、龍也君」  冷蔵庫を再び背負いながら、龍也君にお礼を言う。 「出たな機械獣! 俺のスーパーハンダゴテ光線の餌食になるがいいわ! デュワーッ!!」 「………………」  どうやらお取り込み中のようだった。  基盤にハンダゴテを押し当てる龍也君を横目に、二階の自分の部屋へと向かう。 「よいしょっ……と」  ドスンと音をたてながら冷蔵庫を玄関に一旦置き、明かりを灯す。  テレビにパソコン、電話機や電子レンジ。僕が集めてきた宝物達が光を浴びて輝く。言わずもがな、これは全部あそこから拾ってきた物だ。パソコン以外は全部古めだけど、贅沢は言えない。  その中のひとつ、壁際の小さな冷蔵庫に近寄り、ゴツゴツとした武骨なフォルムを撫でる。 「君とも今日でお別れだねー。長い間頑張ってくれてありがとう。きっと君にもまた、良いご主人が見つかるはずだよ」  今までフル稼働してくれていた冷蔵庫のコンセントを抜き、感謝と励ましの言葉を贈る。……捨てるのは勿体無いからリサイクルショップに持っていこう。いくらくらいで売れるかな……。  そんな算段を立てながら、二代目冷蔵庫を配置してコンセントを繋ぐ。  すぐにブゥンと冷蔵庫の冷却機が動き出す音がして、先代の中から二代目へと中身を移す作業を始める。 「……こうして見ると、僕って今までこんなに小さな物に助けられてたんだなぁ」  同じ冷蔵庫と言っても月とスッポン。全部入れ終わってもまだまだ余裕があるのを見て、思わずため息をつく。いや、多分これが家庭用サイズなんだろうけど、僕からしたら業務用の冷蔵庫みたいな迫力を感じる。恐るべし、先代のコンパクト感。  とりあえず先代の場所に置いたものの、見た目が気になってしまう。少し離れて違和感がないか確認すると、まるで昔からあったかのように部屋に馴染んでいて、違和感なんぞ何1つ無かった。 「ここまでしっくり来ちゃうと、神様が僕の為にくれたってのもまんざら嘘じゃないように感じるなぁ……」  事実、壁の白色とメタリックな青い塗装は部屋に違和感なくマッチしているし、冷蔵庫自体も電球(これは節約のためにLED)の光を浴びてどことなく誇らしげに……。
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