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ここはどこだ?
そんな言葉が頭を過る。
自分はたしか、空を飛んでいた。
空を飛んでいた?馬鹿馬鹿しい。人間にそんなことできるわけがない。
だが、この記憶は確かなものだ。では自分はどうやって、何のために空を飛んでいたんだろうか……。
思い出した。自分は何かを追っていた。いや追われていたのかもしれないが、とにかく何かと共に飛んでいた。それは明らかに自分の味方ではなかった気がする。
というか、そもそも。
「自分は……誰だ……?」
ふと、こんな言葉が口から出た。
日本語を話している。自分は日本人か……。
「あ、起きた?」
目の前に、一人の少女が見えた。
こいつ、確かさっき自分の鼻に噛みついてきたな……。
「あの……どなたですか?」
まずはそれを聞きたかった。
「あ、私は白絹千晴。千晴って呼んでね?」
どうやら気さくでいい人らしいが、なんだかまだ状況が掴めない。
「君は空から降ってきたんだよ?覚えてる?」
覚えてる。覚えてるさ!あんたが木を蹴っ飛ばして自分を落としたことぐらい。
「そうか……やっぱり自分は、空を飛んでいたんですね……」
「やっぱり?」
聞き返してくる千晴。
「はい。なんというか……あまり覚えてないんです。なんででしょうかね……」
「記憶……喪失?」
確かに、それはいちばん的確な表現だが、なんか違う気がする。
というのも、記憶喪失というより、なんとなく、何をしていたかはちゃんと覚えているのだ。空を飛んでいたことだけだが……。
「まぁ、そんなとこなんでしょうね」
適当に答える。
「えーっと……名前とか言える?」
言えませんよ。さっき思い出せなかったところです。
「……」
千晴はなぜかニヤニヤしている。
「実はね、うちのお父さんが武術家で、うち男の子いないから、跡継ぎがいなくて困ってるの。弟子入りする人もいないし……」
話の流れからだいたい予想はつく。自分に跡継がせようとしてるな……。
「で、うちの武術が二刀二銃(トゥソード・トゥガン)っていうんだけど……」
勝手に話進めてるよ。
「ソードとガンから取って、君のこと、蒼我(そうが)って呼ぶね」
なんていい加減な。まあ、名前をくれるだけありがたい気がする。今日はお世話になることにするか……
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