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千晴の父は蒼我の剣を防ぎ、もう一方の剣で蒼我の懐を狙った。
「チィッ!」
舌打ちした蒼我は、素早く後ろに下がり、突きをかわした。
「殺す気なんですね」
冷ややかな目で見つめる。
「当然だ」
こうなったら蒼我も焦りだした。
勝ち負けではない。生きるか死ぬかの問題だ。
相手に絶対的敗北感を与えない限り、生きる道はない……。さぁどうする!?
「ちょっとお父さん!なに言ってるの!?」
突然、蒼我の前に千晴が飛び出してきた。
「おい千晴!そこをどけ!」
父親が大声で叫ぶ。
「嫌です!蒼我様は私のお客様ですから!」
なぜか敬語になる。
「もしお父さんが蒼我様を斬るというのなら……」
千晴の目はつり上がっている。
「い、言うのなら……?」
千晴はニヤリとしてから、蒼我に歩み寄ってきた。
「……」
「……」
千晴は、大胆にも蒼我の唇に自分の唇を重ねてきた。
「私は蒼我様のお嫁さんになります!」
蒼我はこの唐突な展開に着いていけていない。
一方父はというと、娘が得体の知れないふんどし男に取られると顔を青くしている。もはや戦える状態ではなかった。
結果、ある意味で蒼我の勝利であった。
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