銀色の少年

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「蒼我様。カルタをしましょ?」  と、突然千晴が聞いてきた。  世間は正月。やるのは不自然ではない。 「お父さん。札読んで?」  なぜか父親の頭には玉ねぎのようなたんこぶができていた。 「あー……犬も歩けば棒に当たる」  蒼我と千晴はい!い!と言いながら探している。 「見つけた!」  蒼我は札を拾い上げ、手元に置いた。 「転ばぬ先の杖」  こを探す二人。 「見つけた」  また蒼我が見つける。 「え?見せて?」  せがむ千晴に蒼我は札を見せた。  千晴はその札をスッと奪い取り、自分の手元に置いた。 「とったぁ!」  満面の笑みを浮かべる。  いい性格してんなこいつ……。  内心呆れ返る蒼我。 「花より団子」  はを探す二人。 「あったぁ!」  にっこりとして札に手をかける千晴。 「させるか!」  千晴の手をバシーンと叩いて札を奪い取る蒼我。 「むぅ、蒼我様のいぢわるぅ!」  嫌がっているようだが、やや照れ隠し気味のようだ。 「猿も木から落ちる」  さを探す二人。 「見つけた!」  蒼我は札を掴んだ。  瞬間。 「それっ!」  千晴はどこから取り出したのか、水鉄砲を蒼我の顔に発射した。 「ぶぇっ!」 「もぉらい」  腹黒いなこいつ。 「二回から目薬」  にを探す二人。 「あった!」  素早く手を伸ばす千晴。 「させるかぁ!」  蒼我はどこから取り出したのか、木槌で千晴の頭を叩いた。 「うがっ!」  シュッと札を奪い取る。 「なんかこのカルタ続けてると怪我しそうですね」  蒼我は言った。この先何が飛び出すか分かったもんじゃない。 「なら、お餅でも食べますか?」  千晴が立ち上がって言った。 「それなら俺がやりますよ。留めてもらうわけだし」  蒼我は勢いよく立ち上がり、微笑んだ。  蒼我は一人称を俺と名乗ることにした。いつまでも自分では不自然と思ったからだ。
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