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「んあ?」
と、いつの間にか閉じていた目を開いてみると、そこには大きく手を振りかぶる巫女の姿が。
なにやってんだろ、と考えた途端、左頬に凄まじい衝撃。体がぐるりと一回転し、ふらつく足では支えきれずに、天子は音を立てて畳の上に倒れ伏す。
そうして仰向けに横たわったままぽかんとしていると、視界に霊夢が現れた。赤い顔で両手を腰にあて、こちらを見下ろしながら、叫ぶ。
「めっ!」
叫んだあとで、酒臭そうなげっぷを一つ。
「叱るってこんな感じだったっけ」
首を傾げたあと、「ええと、とにかく」と舌をもつれさせながら言う。
「比那名居天子! あんたは自分勝手で傲慢でどうしようもなく馬鹿で、神社は壊すし天気は滅茶苦茶にするし、今日も今日とて意味の分からんことで暴走するしで、他人に迷惑かけてばっかりいる悪い女だ! だから私が叱りました! ちょっとは反省しなさい! 反省したらまあ、許してやろう。みんなも許してくれるわ。うん、多分、そういうこと」
一気にまくし立てたあとにまたげっぷを一つかまして、そのまま仰向けにバタンと倒れる。やがていびきをかき始めた。
しばらく経って、天子はゆっくりと起き上がった。思い切り張られた頬がひりひりと痛む。だが、不思議と悪い気分ではない。何故だか胸の中が非常にすっきりしている。まるで長年溜まりに溜まっていたものが一気に解き放たれたかのような。
(ああ、ようやく)
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