それは我が侭な贅沢

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寝転がったままその会話を聞き、本当に騒がしい連中だなあ、と霊夢は眉をひそめる。そうしてから、少し笑った。 (ほら、見なさい。あんた、割と大事にされてんじゃん) 背後から弾幕ごっこをしているらしき音が聞こえてくる。 あんまり酷くなるようだったら起きだして全員しばこう、と思いながら、霊夢はとりあえず、幸せな酩酊感に身をゆだねることにした。 永江衣玖はちょっとした緊張感と共に、夜の雲の中を飛んでいた。 昼間、比那名居天子と交わした会話が気になって気になって仕方がなかったのである。 どうも、あまり上手くやれなかった気がする。ひょっとしたら自分はやっちまったのではないか、というあの疑念が、ずっと胸の中で渦巻き続けているのだ。 (いいえ大丈夫、私は空気の読める女。たとえ事態が多少まずい方向に向かっていたとしても、これからの努力で修正は可能なはず……!) 自分にそう言い聞かせながら、多分地上に向かったのであろう天子を探して、夜の空を飛んでいる。 衣玖がここまであの我がまま娘のことを気にかけているのには、もちろん理由がある。天子の父である比那名居氏に、娘のことを頼まれたからだ。
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