それは我が侭な贅沢

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召使はしばらく信じられないことが起きたかのようにぽかんとしていたが、やがて少しぎこちなく、だが確かに嬉そうに微笑んだ。 「そうでございますか。ところで、お嬢様」 「なに」 「今日は、どちらへお出かけですか」 「そんなの、決まってるじゃない」 ブーツを履き終わり、勢いよく立ちながら、天子ははっきりと宣言する。 「友達のところ、よ」 召使もまた穏やかに目を細めて笑い返し、深々と頭を下げる。 「お気をつけて、行ってらっしゃいませ」 「うん、行ってきます」 召使に軽く手を振り、天子は軽やかな足取りで比那名居邸を出た。
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