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「不良天人め」
甘い匂いと陽気な歌に混じって、その声は確かに天子の耳に届いた。
声の方向に向かってくるりと振り向き、誰がさっきの暴言を吐いたのか、即座に見極める。一段の右端、碁を打っている男。
天子は無言で霊弾を作り、男の方に放ってやった。碁盤が弾け飛び、歌が悲鳴に変わる。
「な、何をするんだ!?」
情けない悲鳴を上げる先ほどの男に向かって、天子は優雅に微笑みかけた。
「あら、ごめんなさいね、お手玉をするつもりだったんですけれど、手元が狂ってしまったみたい。寛大な心でお許しくださいね、欲を捨てた偉大なる天人様。なにせ私、育ちの悪い不良天人でございますから」
すらすらと淀みなく言って、呆然としている天人の一団に一礼。そのまま、迷うことなく走りだす。
天界の雲の端から地上に向かって飛び降り、激しい風を身に受けながら、天子はなんの気兼ねもなく笑う。
もはや不良天人であることを恥じる必要はなくなったのだと、素直に思えた。
終わり
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