56人が本棚に入れています
本棚に追加
見事に空いた穴。あたしは中に首を突っ込んで覗いてみた。そこには闇が広がっていた。無限続く闇が。
うさぎはこの中に入って行ったのだろうか?
あたしは生唾を飲み込み、覚悟を決めた。
「せっかく追い詰めたんだ、最後まで追い掛けてやる…」
少し怖いが、きっと地面がすぐそこにあるはずだと自分に言い聞かせ、脚を穴へ入れた。
ゆっくり、ゆっくりと、慎重に。掴まる扉に力がこもる。
その時--。
「この無礼者が!!」
さっきまで静かだった扉が突然、あたしに怒鳴った。そのせいであたしは掴んだ手を離し、穴へ滑り落ちてしまった。
気づいた頃には遅く、あたしはどんどん闇に飲まれていった。
「このクソじじぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
地上の光が見えなくなった頃、あたしの意識は徐々に失われていった。だが不思議な事に、死ぬという意識は一切なかった。まるで眠る時のように薄れ始めた。
最初のコメントを投稿しよう!