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少年は軽やかに城の中をかけていく。私は彼を何度も見失いかけそうになった。城の中の光景は見る余裕がない。走ってから10分後少年に何か言おうとしたぐらいだが、何とかそういった心配をせず、少年は部屋に着いたことを告げてくれた。
私は不思議に息切れをしなかった。現実世界では10分もたたずに身体がついていかなくなるのに、である。逆に少年は身体全体に汗を流して今にも水を欲しそうな表情を浮かべていた。しかし、私は何も言わない方が賢明だと思い、そうすることにした。
「……ここはどこですか?」
「時計の間(ま)。目的地にたどり着いたんだ。ここから君は"旅立つ"ことになる。艱難辛苦、それもまたよし」
少年はいつの間にか白い剣を持っていて、私がそれを凝視するやいなや、私の胸を突き刺した。血が私の周りに円を描くように、ドッと飛び散った。
「いってらっしゃい」
少年の顔は無表情になった。
私は少年をみながら意識を失っていった。夢の中でも死ぬこともあるのだろうかと馬鹿な妄想をしながら… … … ‥‥・。
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