第壱冊

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「オーケーオーケー、じゃあこれから第四十二回『穴熊の会』を始めようか!!」 目の前に置かれた大きな酒樽に片足を乗せながら、一人の青年が声高らかに言い放った。 そこはリトルギア大陸のとある地下街にある酒場。 この街の中ではなかなか大きな規模を誇っているその酒場は昼夜問わず常に活気に包まれている。 昼夜、と言うが実際は地下な為に朝、昼、夜という区別は無い。 常に屋外は自分たちで言う夜の状態。それも星や月も無い故に全くの漆黒に包まれた世界だ。 本来なら人間などという夜行には全くと言って特化していない生物は生存できる空間では無いのだが、カンテラに入った灯や歩道に埋め込まれた発光石、家々の窓やドアの隙間から漏れる光などがそれを可能にしている。 時間を知らせるのは教会の鐘、そして自分の腹時計。 そんな場所である。 つまり、「昼夜」という表現はこの土地においては朝、昼、夜といった天文的な現象ではなく時間を表すものであるということを理解していただきたい。
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