第壱冊

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       * 「ピット、初めての穴熊の会はどうだったかい?」 「皆さんの御話を聞いていると自分の未熟さをとても感じました」 帰り道、ようやく出会えた親方のキースの問いにズキズキする頭を我慢しているピットは答えた。 半年しか経験していないピットにとって彼らの話は未知のものであり、これから向かうものなのだ。 だから自分の未熟さと言うよりも経験の無さをありありと感じてしまった結果となってしまっている。 「そうかそうか。いろんなところから学べばよい」 恐縮しているピットの肩をポンポンと叩くとキースは微笑んだ。 まだこの若いこの弟子にこれからだ、と言っているように。 「そう言えば、今日ザリットさんって方にとてもお世話になりました」 「ザリットって……ザリット・ジグムンドかい?」 「はい?キースさんあの人を知っているんですか?」 「当たり前だろう。あの会の主催者だ」 「えええええ!!!」 思わず大声をだしてしまうピットだったが思いのほか頭に響いてそれをひどく後悔した。思わず頭を両腕で抱え込み呻いている。 そんなピットの様子などを苦笑しながら見、キースは踵を返した。 その時に彼がとても申し訳なさそうにしていたことなどピットは知る由も無い。
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