第壱冊

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           * 「そういえば今月は炭坑に行かなかったんですよ。キースさんが用事らしくて」 「たぶん副業だろ。発掘ってのは金がかかるし、食っていくにはすっげーつれえし。だからみんな基本的には副業やってんだ。 警備だとか市場でもの売ったりとか。 で、金がたまったらまた潜って、金が無くなればまた副業。いつか大物を見つけて一攫千金の獲得を目指すってな。 で、それまでに貯めに貯めた借金を返して。 中には俺みてえに後先考えずにただ潜って餓死しかけるって奴もいるから」 「ええっ」 「今はこの間大型の機械を発掘した金があるからいいけどさ」 「ぼ、僕も探さなきゃ……」 「あそこの旦那は毎週一度は隣町のまだ鉱石がでる炭坑で雇われで働いてるし、そこのちっこいのは新聞配達、あそこにいるオッサンに関しては地下警察の使い走りまでやってる。 炭坑で生きるためにはただ炭坑だけと向き合うだけじゃ駄目なのさ……って俺今すっげ―いいこと言わなかったか?」 「最後の一言で台無しですよ」           * 「聞いて下さいよ~!!!」 「オーケーオーケー、聞いてやるから泣くのはストップストップ」 「キースさんと先輩方が最近僕を仲間外れにするんです~」 「見事に酔ってるな……。 アクセル~、ど~しよ。俺初人生相談受けてるぜ?」 「知らん」 「何か慌ただしくしてたり、何も言わずに一週間いなくなったり~。これはあれですよね、僕なんか既に愛想を尽かされてたんです!!ああ、また泣けてきたぁ」 「俺も今の状況に泣きたいかも……アクセルゥ、ヘルプ」 「典型的な絡み酒。取り敢えず諦めろ」 「ザリットさん、聞いて下さいよ~」 「だぁから聞いてるって」 「五月蠅い」
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