時計

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奈々は声のした方へ走った 足音など気にせずに 今は真紀の事でいっぱいだった 「真紀…。」 最悪の事態を想像したが消す まだそうと決まった訳じゃない! だが 「…………。」 トイレの前で立ち尽くす吉崎先生が見えた 「先生!」 「奈々さん?」 先生は不思議そうに見た 無理もない 死んだと思っていたのだから 「生きてたの?」 その顔を見て奈々は察した 真紀が私は死んだと言った事を 先生が赤子さんなら狙われてしまうから 「なんとか…。」 そう言う他がみつからない 「それより真紀は…」 「………。」 先生は黙ったまま何も言わない 「真紀はどうしたんですか?」 強い声で言う すると先生は 「トイレ…。男子トイレで殺されたわ…。赤子さんに。」 そう言うとトイレを指さした 「そんな…。うそよ!」 入りたくなかった 見たくなかった でも勝手に足はトイレへと吸い込まれていた 血だらけのトイレは凄まじかった 来る時に万莉菜の遺体を見たが、それより酷い… 真っ白のタイルに飛び散った真っ赤な血… いや、明かりのないトイレでは真っ赤と言うより真っ黒だ 「うっ…。」 血の臭いは強烈で、さっきまで生きていたせいかどことなく生温い空気に乗ってくる 「真紀…。」 涙も吐き気も止まらない 飛び散った肉の塊が鏡に張り付いていた 凝視する事など出来る訳がなかった 奈々はトイレから出ようとした その時足に何かコツンと当たる 「何?」 拾いあげるとそれは 血にまみれた真紀の携帯電話だった その携帯を制服で拭いた 開けて見ると 真治からの着信があった表示がある 「何で?時間は止まってるはずなのに…。」 「殺される寸前に携帯の着メロが聞こえたわ。」 先生は後ろから呟いた 「真治はどこにいるの?」 その携帯のリダイヤルボタンを押す 「……。」 なんの音もしない 「変だわ。確かに聞いたのよ。携帯の着メロだったの。」 2人は、この空間が狂い出している事に、気付きはじめていた…
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