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静まりかえった倉庫はただ悪臭を放つ場所でしかない 「……。万莉菜?」 智貴は小さい声で言う 「……。」 返事がない 「万莉菜?いるの?」 「………。」 息も聞こえない 「まさか…。」 最悪の場面を想像する 「そ、そんな…。」 智貴は元来た道を歩き出した 「万莉菜…。」 ……… コンッ 微かに後ろで音がした 「…。」 智貴の心は抜け殻になっていた 「万莉菜…。」 うわごとの様に繰り返す コンッ また後ろで音がする でももうどうでもよかった 「万莉菜…。」 歩く足どりは酔っ払いのようにクネクネと蛇行しながら 「万莉菜…。」 顔はぐしゃぐしゃになりながら 涙で前が見えない 「万莉菜…。」 コンッ すぐ後ろで音がする コンッ 智貴は止まる 耳元に風を感じたからだ 「万莉菜?」 …… 耳に入る女の声 『ちがうよ…』 ドンッ グチュッ バキッ 「ぐうぅわぁぁっー!」 倉庫の中の悪臭は 血の臭いで掻き消された… 『ふたりめ…フフッ』
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