喧嘩

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万莉菜の声はいつもと違った 恐怖に震えた声だ 「開けなきゃ!」 私は隠し扉の鍵を外そうとした と、その時 「待って!」 真紀は私の腕を掴んだ 「開けなきゃ!万莉菜追われてるんだよ!」 「もし万莉菜が赤子さんだったら?」 「万莉菜が赤子さんなわけないじゃん!」 「なんで言い切れるのさ!姿を変えるって書いてあったじゃん!」 真紀の声は小声だった なぜか私もつられて小声になっていた 「万莉菜殺されちゃうよ?!」 「開けたらうちらだって殺されるよ!」 「ちょっと待ってよ!どうしたの?真紀!」 「奈々は信じてるけど万莉菜は信じてない!ただそれだけだよ!」 「じゃあこのまま万莉菜が殺されるのを黙って見てるの?」 「どっちにしたって1人しか助からないんだからいずれは死ぬんだよ。」 真紀の言葉は冷たかった 掴んだ腕は赤くなるほど強く握られていた 「真紀…。変だよ…。真紀はそんな人じゃないよ…。」 何故か涙がこぼれた 理由はわからない ただ、悲しさとは違う 悔しいに似た感情だった 「私は奈々を守るって言ったじゃん。最後の1人が助かるんなら、あんたを助けたいの…。」 「私だってそうだよ…。」 扉の向こうで悲鳴が聞こえた 「いやぁぁーっ!」 その声は胸に突き刺さる 掴んだ腕はもう離されてるのに… 何故だろう 強く、強く 拳を握りしめて震えていた… ドンッ グチュッ バギッ 耳を塞いでも聞こえてくる音は 助けてと叫んでいる様だった 「ごめんね…。ごめんね…。ごめんね…。」 何度も繰り返す 涙はとめどなく流れ落ち床に水溜まりをつくった 「万莉菜…。」 もう何の音も聞こえてこない… 『よにんめ…』
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