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学校の制服の上からドラッグストアの制服を着る。まあ、薬屋にありがちなエプロンだ。 「遅いぞ、宇佐美」 「そんなに急かさないでくださいよ、てんちょ、女の子はおめかしに時間がかかるんです」 バックルームから着替えを終えて戻ってくると店長がまた、お小言を漏らす。 「なら髪を切ってこい」 「いやです。怒りますよ?」 前にも似たようなやり取りをしたような気がする。 「あー、わかった、わかった、お前と問答してても無駄だ。ただでさえ遅刻してんだから早く仕事につけ。タイムカードはもう挿してんだから」 「………」 「どうしたんだ、そんな顔して?」 「いえ……少し驚きました」 店長が髪についてあんまり突っ込んでこないとは。 「はぁ? ああ、いい、いい、また繰り返しだ。仕事しろ仕事」 「あ……てんちょ」 ふいに昨日のことを思い出した。 「なんだよ、宇佐美! いい加減に、」 「昨日、何で電話を?」 「電話? した覚えはないが?」 今朝、店長から着信はなかった。すぐに切れたことと言い、なんだか気になってしまう。しかも、店長はした覚えがないという。 「でも、着信が」 そう言って、携帯を見せる。本当だ。と、考えこむ。しばらく、うんうん唸っていたが、突然、思い出したように。 「そういや昨日、大学の友人と飲んでたんだが。わいわい騒いでるとき間違えてかけたのかも」 「飲み会中に?」 「ああ、他の奴も誘おうと思ってな。大分、酒が回ってたから自信ないが、電話を使ったのはその時だけだ」 自信なさそうに呟く。本当に間違えてかけたのだろうか。 「ちなみにかけた相手のお名前訊いていいっすか?」 「ん? 羽山って名前だが」 「電話帳の登録も羽山さんで?」 「? ああ、そうだが。どうした?」 「ふむ……」 私の名字は宇佐美だから、電話帳ではかなり離れる。私の番組は赤外線で送ったときプロフィールごと送ったから店長がいじってない限り『宇佐美ハル』で登録されているはずだ。 酔っ払っていても間違うとは考えにくい。 そうなると、私の携帯電話の番号と羽山さんの番号が似ていて打ち間違えた可能性が考えられる。しかし、酔っている人間がわざわざ手間のかかることをするものだろうか。 よくよく考えてみれば電話の時、音は聞こえて来なかった。騒いでいたなら何か聞こえてくるはず。
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