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時は満ちた。
心に灯るのは私怨の炎。欲するのは復讐の結果。
最終的な目標は思想の実現。目先の目的は殺人。
だが、焦ってはいけない。
“魔王”も語っていたではないか。
知能犯罪において、確実な成功を収めるためには、慎重に完璧な計画を練り上げ、それを大胆不敵に断行しなければならない、と。
魔王にさらわれた男の子は魔王の娘と結ばれる。
シューベルトの魔王の結末にそんなものもあったなと思い出す。
“魔王”は自嘲気味に笑った。
“魔王”の集めた“子供たち”を男の子に例えれば“思想”は魔王の娘で。“子供たち”は“魔王”になるのだろうか。
自分の例えの可笑しさに、堪えれず声を上げてしまう。
「ふははは、なら、私も“魔王”だな」
もう、春になろうかというのに、まだまだ寒い。街の雰囲気もなんだか寒々しい。
「宇佐美ハル……か。“魔王”を倒した勇者とでもいうか?」
“魔王”は再び、人間どもを恐怖に陥れるべきなのだ。
私は顔だけで能のない他の“子供たち”とは違う。“魔王”の思想に感動し、共感し、命を賭しても完遂しようと誓った。
私ならばできる。魔王を継ぐことが。
水は上から下へ流れるだけではない。
さあ、初めなければ。
“Du liebes Kind,geh mit mir! Gar schone Spiele spiel ich mit dir,Manch bunte Blumen sind an dem Strand,Meine Mutter hat manch gulden Gewand.”
「可愛い坊や、私と一緒においで楽しく遊ぼう、綺麗な花も咲いて黄金の衣装もたくさんあるよ」
魔王の一節を口ずさむ。
“魔王”は勇者とお遊びを始めようとしていた。
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