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自分の頬に触れる手の平が大きい。いや、自分の体が小さいのか…
まどろむ意識の中で反芻される今更どうでも良いことばかり。
自分の顔を包む手がふるりと震えた気がしたので、開ける事すら億劫になってしまった瞳をゆっくりと開けてみた。殆ど見えなくなってしまった瞳が辛うじて捉えたのは白銀。 あぁ…弟がいるのか。
「兄さん…死なないで…」
彼がそんな言葉を呟いた。
大丈夫だ。死にはしないさ…ただ、眠いんだ。眠たくて…ちょっとだけ眠りたいだけだ。と伝えたいのだけれども喉は引き攣った様になって声が出る気配もない。
ひくりと彼が震え、水滴がポトリと落ちてきた。
安心しろと伝えたいのにどうして体が動かないんだ…
どうして…と考えている内に意識は混濁してきて…
あぁ…その後は分からない。
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