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折角の珍しい休みなのにルッツは俺の相手を全くしてくれず…あろうことかベルリッツ達の散歩を終えると直ぐに、
「今日は1日部屋の掃除だ!」
だなんて宣言しやがって…エプロン、手袋、マスク、三角巾に片手にはゴミ袋といった完璧な装備で部屋へ引きこもっちまった。
勿論俺様だってルッツにそれをさせまいと抵抗したさ!!
「おい、暇すぎる俺の相手は誰がするんだ!」だの「折角の休みを俺一人で過ごせってか薄情者!!」だの…
でも流石俺が育て上げただけはある生真面目な弟…
「やると言ったらやるんだ。兄さんはベルリッツ達の遊び相手でもしていてくれ」
と見事に一蹴され、バタンと弟の部屋の扉は俺からルッツを切り離すかのように閉じられちまった。
「そんなぁ…馬鹿ルッツぅ!」
悔しくて扉をドンドンと叩いたが、中から聞こえて来るのはルッツの返事ではなくその代わりの無機質な掃除機の音。
はぁと諦めて、息を付いて後ろを振り返ればはっはっと涎を垂らし今にも俺様に飛びかからんと機会を狙っている犬三匹。
今日の俺様の仕事は決まった。
その1
犬に遊ばれてやることだ
□□
ルッツが部屋に閉じこもってしまってから小一時間は経ったであろうお昼時。
ルッツの部屋からあれだけ響いていた掃除機や、物を動かすガタガタといった音はピタリと止み、ゴミ袋一杯にゴミを持ったルッツが清々しい良い顔をして出て来た。
「ふぅ…やはり部屋はこうでなければな…!」
と自分の仕事に大変満足した様子で扉の外からその出来映えに見入っている。
おーいルッツ君、君は何か大切な人を忘れてはいないか?
「あ、そうだ…兄さん。。」
俺の心の叫びが通じたのかどうかは分からないが間抜けな声を出してやっとルッツは俺の存在を思い出してくれ、そして部屋を一別し俺を見つけ出してくれた。
見事三匹の大型犬の下敷きになっている俺を…
「何しているんだ…兄さん…」
ルッツはそう言いながらよしよしと犬を撫で、「ハウス」と号令を掛け俺から重石を外してくれた。だが…そもそもこうなったのはお前のせいだろ!何だその言い種は!!
眉を寄せて怪訝な目つきで俺を見るルッツからは朝方の発言を覚えている様子は一片たりとも見いだせなかった。
俺は何だか怒鳴る気力も削がれ、はぁ…と肩を落として溜め息を付いた。
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