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「"アイツ"が余計な干渉をして来なければ、お前は生まれなかったしこんなことにはならなかったのになぁ~」
狂はやれやれと両手を上げ首を横に振る。沙慈はその言葉にカッとなるも拳を握り締め、堪えるように言い返した。
「"アイツ"は……稔麿は関係ないっ」
「そんなことないだろー?アイツが居なきゃ、先生に従ってずっと一緒に居られた。アイツが余計なことをするから僕らは先生に捨てられたんだ」
「稔麿を悪く言うなっ!!……稔麿は変えようとしてくれたんだ!」
「そういうお前は変わろうとしたか?」
「!!」
珍しく感情をあらわにして反論する沙慈に狂が冷たく言い放つ。沙慈は勢いを失い黙ることしか出来ない。
「お前は先生や稔麿のように己の正義で人を斬ってきた訳じゃないだろ?」
嘲笑を浮かべた狂が沙慈に近付く。
「お前は僕を拒絶して、皆の為に人を斬る"ふり"をして……表面上だけ変わったように見せて、中身は何一つあの時から変わっちゃいない」
沙慈の目の前まで来た狂の顔から笑みが消える。
「お前が僕を認めようとしなければしない程、僕の心は狂い続けるよ?……忘れるな、僕とお前はこの紅い海の底で繋がっていることを」
そう言って狂は、沙慈の胸を拳で軽く小突く。沙慈は一気に気が遠退くのを感じた。
「……僕だって、変わりたいんだ」
そんな狂の呟きが聞こえた気がした――。
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