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「総司にやられた傷の手当てをした時に出てきたんだよ。さて、答えてもらうぞ小僧。テメェ一体何者だ……?」
土方の問いに沙慈は小さく溜息をついて答える。
「何者も何も……おおよそ見当はついているんでしょう?――いずれにせよ、"今の僕"は"沙慈"という名の男です。"沙恵"という娘ではありません」
金色の瞳を真っ直ぐ土方に向けると、土方は満足そうに口角を上げた。
「まぁ、このことは俺と山崎の中だけの秘密にしといてやる」
そんな土方の言葉に沙慈は再び目を丸くする。身元を調べておいて公表しない?局長にすら知らせないというのか……?
「総司と約束したんだろう?……まぁ、野放しにしとくよりマシだからな」
沖田との約束――仕合に負けたら新撰組に入る。
確かにそうなのだが、第一自分は治安を脅かしていた身だし、始末されてもおかしくない。それに加えて、自分が本当は女だということも見当はついている筈なのにこの男は何を言っているのだろうか。
沙慈は可笑しくなって、悪戯っぽく尋ねた。
「狼が狐を飼うんですか?」
「あぁ。まぁちっと狂暴だから牙は抜かせてもらう」
そう返した土方は横目で山崎を見た。山崎の手にはいつの間に取ったのか、布団の脇にあった沙慈の刀があった。
「これからは、総司に全て任せる。アレを返して貰えるかどうかも奴次第だ」
そう言いながら、土方はよっこらせと腰を上げた。
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