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「ここ、女人禁制ですよね?良いんですか?」
立ち上がる土方に沙慈はしつこく尋ねる。本当に新撰組に置いて貰えるのか、まだ不安なのだ。
「雌だろうが雄だろうが、狐なら騙せるだろうよ。第一テメェは男だと言ってるんだ、問題ねぇだろうが」
土方はうっとうしそうに眉を潜める。
「それに、居場所もうねぇんだろ?大人しく言うこと聞いてろ、小僧」
そう吐き捨てるように言うと部屋を出て行く。隣で傍観していた山崎が口を開いた。
「これは沖田センセに渡しとくわ。それと新撰組でのあんさんの扱いは今晩にでも発表されるやろ」
「そう、ですか」
沙慈は煮え切れない返事を返した。山崎は困ったように眉を下げる。
「新撰組はあんさんを受け入れたんやさかい、あんさんも現実を受け入れや。拒絶したって変わらん」
え、と沙慈が山崎の方を向いた時にはもうその姿はなく、天井の穴も塞がっていた。
(新撰組が僕の居場所になるのか……皮肉なもんだな)
初めて居場所を家族を失った時は、長州が新しい居場所になって自分を受け入れてくれた。
それが今は新撰組だ。敵対関係なのに、どちらも同じ位の安心感を感じる。
沙慈は可笑しくなって、小さく笑った。
その時、隣の部屋とここを仕切っていた襖が静かに開いた。目の前の障子戸の前には今だに島田が立っている。何の気無しに襖の方を見て、沙慈は固まった。
「……総司、さん」
「お茶でもいかがですか?」
沖田は何時もの柔和な笑みを浮かべて、お茶と団子を乗せた盆を見せた。
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