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「隊士達には何て言うんですぅ?……噂、広がってまっせ?」
副長の部屋、自室に戻った土方は山崎の言葉に頭を悩ませる。
当初幹部達だけに人斬りの招待を知らせ、他の隊士達には沙慈が正式に入隊したと伝えるつもりだった。
しかし、沙慈捕縛に参加した平隊士が沙慈の顔を覚えており瞬く間に広がってしまった。
「まぁ、だがアイツらは敵として非難している訳じゃないんだろう?」
「うーん、まぁ……」
確かに、平隊士の多くは沙慈を非難したりはしていない。
初めて沙慈が新撰組に顔を見せた時のことを知っている者は、
『永倉先生と互角に手合わせしてた奴』
と認識しているし、捕縛の際の沖田との仕合を見ていた者は、
『沖田先生とも互角にやり合える奴』
と認識されている。いずれにせよ、相当の実力の持ち主位にしか思われていない。
そのどちらでもない者だって、大方の者は町の噂――所謂正義の味方のように思われていることを知っていれば、志は同じだと認識している筈だ。
「だったら問題はねぇ。わざわざ偽ったりせず、奴はそのまま新撰組に配属させる」
「そうでっか……。でも、隠し事はするんやろ?――女であること、そして長州との繋がり」
山崎が静かに告げる。山崎は沙慈と鳴海が口論していた時、屋根裏でそれを聞いていたのである。
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