陸.新撰組加入

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「当然」 そう言って、書類から後方にいるだろう山崎の方に振り向いた土方は、顔を引き攣らせた。 「テメェは何で、真面目な話してる時に蝙蝠ごっこなんぞしてやがる!」 蝙蝠ごっこ――確かに今の山崎は天井からぶら下がり蝙蝠のようだ。こめかみを痙攣させている土方をものともせず、山崎はヘラヘラと返す。 「わいは世間話しにきただけやで~」 悪びれもせずぶらぶらと天井から垂れ下がる山崎に、土方も怒る気を無くす。 「ま、沖田センセがあの子の面倒見るんやったら心配あらへんでしょ」 「総司が珍しく気に入った奴だからな」 土方も山崎も沙慈自体には、あまり心配していない。問題は―― 「……長州、か」 土方はそう呟いて煙管をクルクルと回す。土方は重度の喫煙家ではない、気が向いた時にだけ吸う。だから何時もはこのように、手持ち無沙汰な手を落ち着ける為に使うのだ。 「沙恵から沙慈に変わって京に戻るまでの空白の期間、恐らく長州と何かしらあったんやろけど……」 「今繋がりが無いと言っても、相手はそう思っちゃいねぇかもしれねぇ」 土方がニヤリと口角を上げる。 「丁度ええ餌ってことやね」 山崎の言葉に土方は頷く。八月十八日の政変の後、長州が再び京に来るとすれば沙慈の力を求めて何かしら接触をしてくるかも知れない。 失敗を起こさない為にも、沙慈の力は貴重なものの筈。だが逆にその力をこちらのものに出来れば、鬼に金棒。 使えるものは使う、それが土方の流儀なのだ。  
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