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「隊士にするだけやのうて、長州の餌にもするなんて、副長も人使いが荒いでんな~」
山崎が茶化すようにそう言えば、土方はいや、と頭を振った。
「あの小僧は隊士には出来ねぇだろうよ……総司が刀を取り上げちまったしな」
土方の言葉に山崎も、あ、と声を漏らす。沙慈から刀を取り上げるように言ったのは沖田だ、土方は別に気にしていなかったのだが、沖田がどうしてもと言うので取り上げたのだ。
「でも確かに刀から離して正解やったと思うで……あの子多重人格者なんやろ?」
「信じられねぇがな」
「でもほんまやと思うわ……気配が二つあったし。不安定な状態で暴走されても困るやろ?」
土方は眉間に皺を寄せて唸る。確かに新撰組のことを思えば、情緒不安定の何の信念も無い奴が刀を持っているのは宜しくない。
だが、これからの沖田の働き次第ではそんな危険分子では無くなるかもしれない。
だからこそ長州の餌にしつつ、新撰組から手放さない為にも何かしらの役に就けなければならない。
単なる捕虜などでは無く、新撰組に馴染めるような……隊士以外の役職。
そんな都合の良いものが――
「にしても、"柊"も急に下働きが居なくなって今頃大騒ぎなんちゃう?」
――あった。
土方は一つの案が沸き眉間の皺を解いた。山崎が狙って言ったのかどうかは定かでは無いが、土方は山崎に感謝した。
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