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「今の貴方が例え化け物並の強さだとしても、人間の真の強さには勝てませんよ」
沖田の表情から笑顔が消える。珍しく真剣な表情と声に、狂は閉口する。
「今の貴方は人を辞めようとしている……武士になりたいという夢はどうするんです?」
「そ、そんなもの僕にはもう関係ない!所詮僕は化け物や人斬り人形になるのがお似合いなんだよ!!」
狂は激昂し一瞬で沖田の背後に移動すると、得意の居合を繰り出す。
……が、やはり素早く身を翻した沖田に受け止められてしまい、身体には傷一つ付けられなかった。
「僕と露原さんは似ている……でも一つ違うのは、自分を受け止めているかいないかです」
刀をいなされた狂は再び間合いの外へ押し出される。狂の後ろには心配そうな原田がいる。
「煩い、止めろっ!折角ちゃんと表に出られた所なんだ――!!」
「貴方こそ黙って下さい。僕は"露原沙慈"という人に話しているんです。"狂さん"、貴方じゃない……」
沖田の言葉に、狂が頭を抱えだす。心の奥に引っ込んでしまった"沙慈"が出て来ようとしているのだ。軽く精神が乱れている。
「露原さん、貴方は"狂"が怖いんでしょう?だから拒絶してきたんじゃないんですか?」
――怖い。いつだか親友が気付かせてくれたコト。僕はまた忘れようとしていた
人を斬る時……僕はいつも笑っていたけど、本当は辛くて苦しかったんだ
狂の中に沙慈の言葉が響き渡る。狂は頭を苦しそうに抱えながら沖田を睨んだ。
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