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「沖田、総司……お前は邪魔だ……っ。沙慈はもう関係ない、奴は僕の仮面でしかない、惑わすのは止めろ……!」
狂はギリギリと歯軋りをしながら、爛々と輝き揺れる金の瞳を沖田に向ける。
「惑わすも何も、僕はただお話しているだけですよ?……"狂さん"も強くなりたいのでしょう?貴方も同じ"露原さん"なのだから」
獣のような殺気を放つ狂に怯むことなく沖田は微笑む。
「あぁ、僕は強くなる。何も感じず何にも囚われない……無情の人斬りになってな!!」
言い終わるか終わらないかのタイミングで狂は沖田と間合いを詰め、刀を振り下ろす。沖田はそれを受け止め弾くが、その反動を生かして狂は幾度も打ち込む。
(永倉さんや平助と手合わせしていた時より速いな……。これが"狂"の本気と言った所か――)
口元は緩んだままだが、目だけは冷静に狂の動きを分析する沖田。
"沙慈"と"狂"……。
何故露原という人間の人格が二分されてしまったのかは分からない。
だが、確実に今刀を振り下ろす人物は"狂"そのもの――永倉や藤堂との手合わせ(特に永倉)の時に垣間見えた"狂"が今こうして完全に表に出ているのだ。
沖田はこの二つの人格を持つ露原という人間にとても興味があった。面白くて放っておけなくて……とにかく近くにいて、もっとこの人の事を知りたいと思った。
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