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沙慈が「強くなりたい、武士になりたい」と言った時、沖田は嬉しくなった。そして約束したのだ……彼女を強くしてあげる、と。
この約束がある限り沖田は沙慈と一緒にいることが出来る。彼女をもっと知ることが出来る。何故ここまで執着するのかは沖田自身分からない……ただ一つ思ったのは自分達は似た者同士だと言うこと。
「ふふふ、ここまでの力量があったとは……出し惜しみなんて酷いですねぇ」
沖田は眉を下げ、困ったように笑う。どんなに刀を打ち込まれても、沖田は楽しそうにしている。脇で見ている原田や平隊士達は気が気ではない。
二人には死への恐怖がないのだろうか?
否、そんな感覚さえない。狂っているのだ、沖田も露原も……。
「ふん、一応沙慈も僕だから剣は扱えるけど本当に扱えるのは僕だからね」
狂は沖田の問いに鼻で笑って答える。
「沙慈と僕。根本は同じだけど……僕らは違う。僕が出来ることは沙慈も出来るけど、それは僕には劣る」
鍔ぜり合いになる二人。狂は静かに言葉を紡ぐ。
「だからこそ僕は、堪えられなかった。自分の力を出し切れないことを……。僕はずっと沙慈に抑圧されて、ほんの僅かにしか表に出られなかったから……!」
狂の口調が再び荒くなる。怒りや憎しみが沸き上がっているような表情を浮かべ、刀を握る手にも力が入っていた。
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