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「さて露原さん、そろそろ疲れてきたでしょうから終わりにしましょう」
話題を変えるように狂に明るく語りかけると、沖田は平晴眼に構えた。
「!!」
今まで訳が分からないという風にボケッとしていた原田がここで、はっとした表情になる。
「目が覚めたらまたお話しましょうね」
「総司っっ!!」
沖田は言い終わるやいなや、だん、と強く踏み込んで構えの甘い狂に突きを繰り出す。と同時に冷や汗を垂らした原田の叫び声が響いた。
咄嗟に防ごうとした狂に、沖田の三回の突きが襲い掛かる。
――かの有名な『三段突き』である。
沖田が手を抜いたのも手伝って、狂は沖田の二回の突きは辛うじて防ぐことが出来たが最後の腹部の一撃はもろに食らってしまう。
「ぐっ……!」
搾り出すような呻き声を上げて、狂が崩れ落ちそうになった所を原田が支える。
「総司、おめぇ……」
原田が低めの声で沖田を見据えると、沖田は困ったように肩を竦めた。
「やだなぁ、峰打ちですよ。でも二回も防がれるとは思いませんでした~」
飄々と述べる沖田に原田はズルっと肩を滑らせると苦笑した。
「ったく、俺ぁ……殺さないか心配でヒヤヒヤしたぜぇ……」
「ふふ、お疲れ様です原田さん。ささ、帰りましょー」
んー、と伸びをすると沖田は意気揚々と歩き出す。原田は溜息を一つついて、意識を失った狂を肩に担ぐとそれに続いて歩き出した。
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