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平隊士達に他の者達にも見回り(沙慈捜索)を切り上げることを知らせること、一足先に屯所に戻りこのことを報告することを頼んだ沖田と原田は二人で帰路に着いている。
「なぁ総ちゃん。さっきのありゃ何だったんだ?」
隣の原田が沙慈を担ぎながら沖田に尋ねる。沖田と狂の話はよく分からなかったからだ。
「こいつはさっちゃんだろ?でもさっきのさっちゃんは自分を"狂"だって言って……雰囲気も違ってた」
「だから、さっきの露原さんは"狂さん"だったんですよー」
「だぁあ、もうっ!それが分かんねーっての!!」
空いている手で頭を掻きながら喚く原田を沖田は静かに、と嗜め解説を始めた。
「つまるところ、露原さんは多重人格者なんだろうと思います……にわかには信じられませんが」
「多重人格ぅ……?」
「始め僕は露原さんは人斬りの自分を狂気と例えているんだと思っていました……でも、実際は違った」
原田は取り敢えず大人しく話を聞くことにする。
「露原さんは"沙慈"と"狂"の二人が存在したんです。そこで僕は少しの間二人は別物と考えてしまった時もありましたが……やはり二人は露原さん以外の何者でもなかったんです。」
「別物って言うのは?」
「僕が強くすると約束したのは"沙慈さん"の方です。だから取り敢えず"狂さん"を倒して新撰組に入れようと考えました。……体は露原さんな訳ですし、闘いの最中"沙慈さん"を引き出せれば、と」
川沿いを歩く二人の耳に、静かな川のせせらぎと鈴虫の鳴き声が届く。
静かな時が流れる中、沖田の話は続く。
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