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「んーじゃあ、"狐の面の人斬り"は"狂"の方だったってことか?」
原田が頭を捻りながら呟くと沖田は首を横に振った。
「それでは闘う前の僕と同じです。"狂さん"がさっき言っていたでしょう?――今日やっと完全に表に出れた、と」
「あぁ!……ってことは今までの"狐の面"はやっぱりさっちゃんなのか」
合点が言ったように原田が声を上げると、複雑な表情で沙慈を見た。
「露原さん――"沙慈さん"は侍のように強い信念を持つ人間になりたいと言っていました。だから『京の人を守る』という信念の元、他人の為になる人斬りをしているつもりだったんでしょう……」
沖田も悲しげな表情で原田に担がれている沙慈を見つめた。
「でもそれは、もう一人の自分である"狂さん"の欲求を満たす為のものだったんです」
「あぁ……アレか。人を沢山斬って化け物になるっていう……」
「そうです。その狂った殺人衝動の為に人を斬っていたことには露原さんも気付いたようでした……」
沖田は寺でのことを思い出しながら再び前に向き直した。
「自分は"沙慈"ではなく"狂"だったのだと、自らに失望した……それに加え鳴海さんとも何かあったようですから、それが原因で"狂さん"が表に出てきたんでしょうね」
「いきさつはなんとなく分かったが、結局その二人が一緒って言うのがよく分かんねぇ……」
難しい顔をする原田に、笑い掛けて沖田は再び話し始める。
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