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「露原さんの中の二人は……なんだか一つのものが分かれたような、そんな感じがするんです」
あぁ、それで同じなのかと原田も納得したように頷く。
「情緒に溢れた"狂さん"……そしてそれとは逆に感情を余り感じない"沙慈さん"。何があったのかは分かりませんが、二つに分かれてしまっただけのような気がするんです」
「……ふーん」
「まぁ全部僕の憶測ですから、本人に聞かないと分かりませんけどね……"沙慈さん"も"狂さん"も強さを求めている点では同じなんだと思います」
「剣を交えて感じたってとこかい?」
「そう、ですね。約束ですから、僕は露原さんを強くしてあげたいですね。なんだか放って置けないですし……」
苦笑を浮かべる沖田を原田は少し驚いたように見詰めた。
沖田が局長である近藤や土方以外の人物にここまで入れ込んでいることが珍しかったからだ。
(総ちゃんをここまで引き付けるたぁ……この坊ちゃんは一体何者だ?)
肩に掛かる重みに心の中で疑問を浮かべるが、答えはない。
第一、原田は沙慈が本当は女だと知る由もない。
これで沙慈が女だと知っていたらもっと驚いていたことだろう……。
沖田は剣のことばかりで女性に全く興味がないのだ。その沖田が一人の少女にここまで入れ込むのは珍しい。
「原田さん、何ボケッとしてるんですか?屯所に着きましたよー」
「あ?……おぅわりぃ」
二人はそれぞれの思いを抱いて屯所に帰る。
沙慈の運命の輪がゆっくりと動き出していた――。
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