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「わがままは少し言うかもしれないけど、だめならちゃんとあきらめられるわ。むきゅー、だめかしら?」
今まで見てきたゆっくりの中では、明らかに一番の饒舌さだった。そこで一部始終を見ていたであろう店員が私に声をかけた。
「そのぱちゅりー、お気に召しましたか?」
「……まあ、いいとは思います」
「その子はいいですよ!この時点で語彙がかなりあるようです。長く続いているぱちゅりー種の子孫のようで簡単な漢字も使えるようですし、人間同様のコミュニケーションをしながら育てられますからね」
確かにこのぱちゅりーはいいかもしれない。
「僕のありすなんかと比べたら大人しくて可愛いと思いますよ」
……彼もゆっくりを飼っていたのか。ありす種は大変そうだが、ペット認定のしつけはされてるからある程度の常識はあるのだろう。
「そのぱちゅりーいかがですか?一番可愛い時期を少し逃してしまったため今なら彼女は2割引なんですが」
「むきゅ、おとくでしょう?」
「………………」
そして私は、財布を鞄から出したのだった。
◇
「むきゅー、おねえさん、あらためて初めまして」
「初めまして。これからたくさんゆっくりしていってね。」
「おねえさんもゆっくりしていってね。」
ついでに買ったゆっくり飼育などの本を使いながらこれから育てることにする。あのありす店員に勧められたから買ってしまったものの、果たしてこの優秀な子にこんな本は必要あるのだろうか。まあ、何かにいずれ役立つかもしれないし、使えなくとも美味しい焼き芋はできるだろう。
「じこしょうかいするわね。わたしはぱちゅりーしゅ。一個体に対して、わたしに対してもとくべつな名まえはないの。だから、ぱちゅりー、ぱちぇ……好きなように呼んでくれてかまわないわ」
これから更に漢字を覚えさせたり出来れば、普通の人間と同じように喋れるかもしれない。……もしかしたら私は、無限の可能性を秘めた子を迎えたようだ。
「むきゅー、おねえさんの事をおしえてくれる?」
「あ、うん。私のことはお姉さんって呼んで」
「むきゅ、初めからよんでるわ、ほかのことを知りたいの」
ゆっくりに突っ込みを入れられるとは思わなかった。……けれど、こんなゆっくりは初めてで凄く新鮮に感じた。もしかしたら漢字を使う程度の能力を持つゆっくりは珍しくないのかもしれないけれど、私はこんなぱちゅりーに出会えた事を、嬉しく思っている。
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