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ある程度ちゃんと自己紹介をして、学生だと言うとぱちゅりーは口を開いた。
「──むきゅ、学生だったのね。わたしを買うお金はあったの?」
「まあ……そりゃ買ったしね。子供の頃からの貯金も下ろしたし、バイトもしてるし仕送りもあるし」
「むきゅ!ちゃんとおやにかんしゃするのよ!」
「はーい」
どこかとても不思議な気分だった。言葉で表現するのは難しいけれど、ゆっくりと話している気がしない、というのがしっくりくる。馴れ馴れしさというのだろうか?それがかえって心地良く、まるで友人と喋っているようだった。
「おねえさんはゆっくりをかうのは初めてなの?」
「うん」
「むきゅ、安心していいわ。分からないことがあったらわたしがおしえるから!」
目を誇らしげに輝かせているぱちゅりーに私は微笑んだ。
「まずは買ったゆっくりせいかつセットをあけてみて」
「……あ、今教わるの?」
「とうぜんよ!その中にわたしの『せいかつひつじゅひん』が入ってるんだから」
社交辞令かと思ったのだが、どうやら本気で教えてくれる気らしい。私はありす店員に勧められるがままに購入した『ゆっくり生活セット』をビニールから取り出した。開けてみるとトイレやら、お風呂セットやら、ゆっくりベッドやら、ゆっくりお食事セットやら……そんなものがポンポン出てきた。おお、トイレは確かに今やらないとまずいかもしれない。私はため息をつきながらも立ち上がる。説明書を取り出して読むと、トイレは簡単に組み立てられた。
そしてトイレとセットになっていた『ゆっくりトイレペーパー』を下の台に入れ、上に『ゆっくりトイレ砂』を入れた。砂と言うより動物の餌みたいな小さいブロックのようだった。汚くなったら取り替えろと書いてあった。これで完成らしい。
「むきゅ!速いさぎょうだったわ。次は……」
「とりあえずお腹すいた。あとはご飯の後じゃだめ?」
「むきゅー、かまわないわ。わたしの分もちゃんとよろしくね」
はあい、と返事をし、私は『ゆっくり食事セット』を持ってキッチンへ向かうのだった。
初めてのゆっくり。けれど彼女がいれば不安はないかもしれない。ふと振り向くと説明書を読み漁るぱちゅりーに笑顔がこぼれた。
(セット内容は皿とフォークとスプーン)
(……手なんて見たことないのだが果たして使えるのだろうか……)
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