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私が産まれ、父は酒を断ち、まっとうに働いた。
が、長続きはしなかった。
堪え性のない性格か、それとも身の丈に合わない自尊心を抱えているのか、やれ給料が不当に安いだの、やれ上役が気に入らないのだの、難癖を付けては仕事を辞めた。
母は生活のため産後間もなく職場に戻り、父も再び酒を飲み始めた。
すさんだ生活だ。
母がなぜ父と縁を切らなかったかはわからない。きっとこの先も理解出来ないだろうという漠とした予感はある。
しかし父が母と切れなかった理由は簡単だろう。
なんのことはない、生活のためだ。昼日中から酒をのめるヒモの身分を手放したくなかったのだろう。
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