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父か死んだ。
だからといって、なんら感傷的な気分さえ起きない。
まっとうな人間ならなにかしら抱くであろう感情の揺れも露ほどない。
果たして私の人間性が磨耗し、私というものはおよそ非人間的になってしまった、のであろうか。
いや、そうではない。もっと単純な話だ。
私と父との関係が、それだけのものだったに過ぎない。
いや、もっと簡単に言うなら、もっと悪意を隠さないのなら、父という人間は、それだけのものだったのだろう。
父の死は私にとって、父の死を取り繕うための火葬やら葬儀やらの儀礼的な行為への参加を強要されるわずらわしさ以外、なんの感慨ももたらさなかった。
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