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私が父を嫌っていた、というわけではない。 いまさら言い訳がましいが、私は父を嫌ってなどいない。 振る舞いが粗暴であるとか、周囲への配慮に欠けるとか、無知で無教養であるとか、それらひとつひとつの父の個性など気にもならない。 嫌いではない、興味が無いのだ。 父が酒に酔い、誰かを殴って留置場に置かれようと、場末の酒場の酌婦とねんごろになり、姿を消そうと、すべからく私の心を乱すことはない。 私と父との関係性は、血縁であること以外、とうの昔に形骸化してしまっている。 ただ、ひとこと加えるとするならば、父に興味が無い者は、私だけではない。 弔問客が七人。香典がしめて二万三千円。五十数年生きて、父の残した関係性はこれだけである。
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