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父は死んだ。 それだけだ。 それだけの人だった。 私は彼女に、そう説明した。喪服の少女。私の異母妹である。 葬儀の終わりに名乗り出て、彼女は私に頭を下げた。あなたから父を奪ってしまったと深々と頭を下げたのだ。 だから、私は偽らざる私の心境を彼女に話した。けして強がりでも、あなたを庇うつもりでもないが、と付け加えて。 彼女は少し返答に困った顔をして、それでも父が彼女の父になる以前の、父の半生を教えてくれないかとねだった。 父は新たな家族に自らを語ることはなかったらしい。 別段、断る理由もないので、しかし先ほども言った通り興味がなかったので詳しくないが、と前置きして私は語り始めた。
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