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やがて温厚で面倒見の篤い勤め先の社長も、父を庇いきれなくなり、二十歳そこそこで退職している。 その後は、あまり良い人生ではなかった。勤めていたころ覚えた酒に、次第次第と溺れていった。 通い詰めたキャバレーのホステスの部屋に転がり込み、女から小遣いを貰って博打に興じる。寝ているとき以外は酒臭い息を吐き、怠惰で享楽的な生活をしていたらしい。 自分の女が商売がら客と親しくしていると、みっともない嫉妬心を露わにして手をあげることもたびたびで、女衒にすらなれない、ただのくだらないヒモだった。
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