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「―よし、じゃあこれで登録は終わりだ。校内の許可された区域は入れるし、食事や買物にもこのカードを使える」
「おぉ。ありがとー!!……ございます」
しばしば敬語が狂うところをみると、やはり使い馴れていないのだろう。
普通に話せば良いのに…と言いたいところだが、生憎余計な世話はしない性分なのだ。
「だが、そのIDはお前の全てが入っているに等しい。絶対に無くすなよ?」
「は…はい…」
先程のスラックスから取り出した動作と言い、今の自信なさ気な返事と言い心配だ。
「カードの角に穴が空いているだろう。そこにチェーンでも通してベルトやブレザーにでも繋いでおけ」
「おお!!成る程…………あ、でも…」
ポンと手を打った山神は、しかしまた顔を曇らせた。
「どうした」
「あー…チェーンって購買で売ってます…?」
「…あぁ、無いのか?」
「私服とかは後で送ってもらうことになってるから…」
成る程。
購買部にあるのは飾り気の無い安物、ブランド店に行ったら良いものはあるが価格が高すぎる。
後で届くなら買うのも無駄だろう。
「ふむ…ああそうだ」
少々余計な世話を焼く気になった俺はソファを立つ。
「…ぉ、瀬渡?」
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