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立ち上がり、仕方がないので内線を取る。
「―…もしもし、生徒会の佐熊だ。ID証用のチェーンを一つ、至急生徒会室まで頼みたい」
電話先は購買部。
実は生徒会室から電話をかけると、学園内の店舗の商品はほぼ無料、かつ最速で届く。
…最初から電話しろと?
最初は先輩からもらったものをやればいいと思ったし…それにあまり好きではないのだ。
『自分』が『特権』を利用するのが。
受話器を置いて数分後、ノックの音が響き、購買部の使いが入って来る。
「っちわー、購買部でーす。アヤちゃん居るー?」
ドアを開けたのは短い銀髪の生徒。
細い箱を片手に文の名を呼びながら入って来る。
「佐伯先輩…」
「おっ。アヤちゃ~ん、今日も可愛いね」
渋い顔で声を発した文を認めて、佐伯は楽しそうに笑った。
佐伯隆継(サエキ タカツグ)。
2年Aクラス。『花』だ。
食堂で山神に難癖を付けていた相模原はこの生徒の親衛隊に入っている。
性格は―遊び人、と言えるだろう。
昨日は誰と肩を組んでいた、今日は誰が約束したと、噂の絶えない人間だ。
Aクラス所属とあって金は充分有るのに購買部でアルバイトのまね事をしているのも、今のターゲットが購買部の関係者だからだという話も有る。
まぁ噂は噂だ。
ただ、俺は入学してから二年、こいつが本気で恋しているところを見たことが無いと思う。
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