第一章

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 違いました。  目が合っていたのは私がまじまじと彼の顔を見ていたからです……。  少し不機嫌そうな顔でこちらを見ている佐伯くんに眉毛を下げながら微笑むと、彼も微笑み返してくれたのです。  怖いイメージがありましたが案外優しいのかもしれません。  それから委員会での仕事を終了し図書室の窓に鍵がかかっているかだけチェックして 図書室の鍵を閉めました。  その後は職員室へ行き、鍵を所定の場所に戻し下駄箱まで階段を降りていると、上の階の階段から変な声を耳にしました。 『さえ…くん、やめっ…』  初めは特に気にすること無く下駄箱まで行きました。  しかし、重大な事を忘れたのです。 「教室にあれを忘れてしまいました」  独り言を呟きながら、階段を昇ると先ほど気にもしなかった声が大きくなっていく事に気がつきました。  きっと友達がまだ残っていて話をしているのだと思ってそのまま、階段を昇りきり左へと曲がると……。
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