Chapter Ⅰ

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夜の闇に紛れ、漆黒のローブが風に舞う。 コツ、コツ、コツ…… 靴底が地面にあたり、音が反響してそれがよりいっそう不気味さを際立たせていた。 「チッ……、またアンタ等か」 声変わりしきっていない少年の声がしたのを合図に、複数の『男』達は歩みを止める。 「……大人しく、我等に捕まってはくれないかね?」 複数の内の一人が少年に手を伸ばしたが、その手が届く前に、少年は2・3歩後ずさった。 「帰れ。アンタ等に捕まるくらいなら、元の生活に戻った方が数倍マシだ」 「ほぉ?元の生活に、かね?あれのどこが楽だと言うんだね?一日中、地下牢に閉じ込められ、訓練として囚人を殺める日々を送る生活の、どこが楽だと言うのだ?大人しく我等と共に来い。『パンドラ』は君を歓迎する」 「ふざけるな。私欲の為にしか考えられない奴等の巣窟に、誰が好き好んで着いていく?もう一度言う。帰れ。忠告は素直に受け取っておいた方が良い、パンドラの使者」 少年はもう2・3歩後ずさり、膝を屈めそれをバネに大きく跳躍すると、建物の屋根に綺麗に着地した。 やがて雲が切れ、月が姿を現すと同時に暗闇が仄かに照らされる。  
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