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「……どうする?今なら、僕に殺され掛けようが、誰も助けてくれないぞ?フッ、まぁ……不様に悲鳴でも上げてみれば、誰かが気付いてくれるかもしれないがな」
その首に手を添え、少しだけ力を入れるセレス。
だが、キリクは此方を真っ直ぐに見据えたまま、先程ナイフを投げられた時同様、全く身動ぐ事はなかった。
「どうした?抵抗してみせろ」
「どうして?そんな必要は無いよ。だって、君は僕を殺さない」
「…………」
セレスは、キリクの言葉に呆然と目を見開いた。
「分かるよ。さっきナイフを投げられた時も、いきなりだったけど、避けようと思えば避けられた。だけど、避けなかったのはナイフの軌道がズレているのに気付いたから。それに君からは殺気が感じられない」
なるほど。
コイツ……────
「フッ、クククッ……アハハハハハッ!」
「え、どうし……?」
「やっぱり嫌いだ。彼奴の孫だとか、ナイト家だとか、関係なくてもお前は僕の嫌いなタイプだ」
「…………」
キリクが、目を丸くして此方を凝視しているのを、見て見ぬふりをしてセレスは上から退くと、自室に入る。
そして扉を閉める直前に驚いているキリクを一瞥した。
「最悪のルームメイトだよ、お前は」
最後にそう吐き捨てるように言うと、完全に扉を閉めてセレスはベッドに倒れ込み、眠りについた。
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