Chapter Ⅱ

3/32
前へ
/784ページ
次へ
今の笑みは、一体どういう意味があるのだろうか。昨日のとはまるで違う、中身の無い空虚な笑み。 そして、自分で作った物しか食べられない理由……。 「!」 セレスはハッとして、だが、キリクに悟られないよう一旦洗面所へと姿を消した。 自分で作った物しか信用出来ない理由なんて一つしかない。 小さい頃から食事に毒が混入している事なんてしょっちゅうだったんだろう。 当然キリクは上流階級の貴族だ。昔から暗殺の危機に晒され続けていれば、他人の作ったモノなんておいそれと口に出来る訳がない。 セレスは、冷水で顔を洗うと、鏡の中の自分を睨み付けた。 だから何だと言うんだ……。 彼奴がどんなに辛い目に合っていようが、僕には関係の無い事だ。 彼奴よりも長生きしている僕の苦労より、幾分マシというもの。 顔を拭いたタオルを乱暴に篭に突っ込み、セレスはリビングへと戻った。 「今日編入するクラスは、もう知っているの?」 「……いや」 「そう。良かったら、僕が教員室まで案内するけど、どうかな?」  
/784ページ

最初のコメントを投稿しよう!

509人が本棚に入れています
本棚に追加