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そう言われ、朝食を食べていた手を止めたセレスは、キリクの、先程のものとは違う穏やかな表情を見て、一瞬黙り込んだ。
平和な風景とはこういう事を言うのだろうか。
何度も思い描いていたものと寸分違わない筈なのに、何故こうも釈然としないのか。
不思議でならなかった。
「……クラスは知らないが、担任なら分かる」
「へぇ、誰?」
「確か……、ケイト・グランツ」
「…………あぁ、うん。あの人、ね。奇遇だよ、僕と同じクラスだね」
今の間は、何だったのだろうか。
セレスが怪訝そうに見ていると、キリクはニコッと笑いながらカップに紅茶を注いだ。
「お前……、グランツが嫌いだろう」
「あはは────さぁ……、どうかな?それより、学校の事で聞きたい事はない?僕で良ければ、教えてあげるよ」
「────興味が無いな」
今しがた質問を逸らされ、気分を害したセレスは、大人げなくも会話をバッサリと切り捨て、そして、困ったような笑みを浮かべているキリクを睨み付けると、椅子から立ち上がった。
「ごちそうさま」
そして、食べ終わった食器を片付け、セレスは制服に着替える為に再び寝室へと戻った。
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