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光を嫌うパンドラの使者は、被っていたローブのフードを深く被り直し、光から逃れ闇と同化した。
「二度と来るな……」
呟かれた言葉は、誰の耳にも入らず、風に乗って消えていった。
* * *
「こらっ!お前はまた儂の話を聞いとらんの?」
「ん?あぁ……悪い。昔の思い出に耽ってた。で、話って何だっけか?」
少年は、目の前に座る老人を面倒くさそうに見ると、頬杖をつく。
髪も眉毛も睫毛も髭も全て真っ白なこの老人、御年75。
「じゃから、季節外れも百の承知でお前に我が校へ入ってもらいたいのだと言っとろうが!何度言わせる?馬鹿者が」
「お前?馬鹿?それが人に物を頼む態度か?シルヴァ……」
うぬぅ……と唸る老人。
名を、シルヴァ・ミオルグ・ナヴィア。
今はすっかり年老いているが、その昔50年前に起きた戦争では大佐の地位に就いていた切れ者だ。
少年が初めてシルヴァと相見えたのは、その時である。
「……教員としてならまだしも、生徒として学校に入って、一体僕に何のメリットがある?頑是無い子供達の輪に、獣を入れるのはいただけないな、シルヴァ」
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